呼び声

4/10
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
    痛そうにうずくまる隆也のそばで速人がカタカタと震えている。 「いつも気が利かなくて悪かったわね」 ビニール袋をぶら下げた少女が言った。 少女の名は 波浦 瑞穂(なみうら みずほ)。 不機嫌そうに2人を見下ろしている。 「痛ぇなぁ………」 「せっかく飲み物買ってきてあげたのに」 手にぶら下げたビニール袋を掲げてみせる。 「あー……」 隆也は頭をさすりながら己に当たったであろう物を見た。 (紙パックで本当によかった!!缶だったら即死だぞコレ!!??) 「わ……悪い。サンキュ…」 隆也までカタカタと震え出し、謝罪と感謝を述べた。 「はい。速人」 いまだ震えている速人にジュースを放り投げる。 「あ……ありがと。お?なんだ澪も一緒か」 ジュースを渡されて少し余裕ができたのだろう。 瑞穂の後ろに居るもう1人の存在に気付いたようだ。 「……そこで会ってな」 無愛想に少年が答える。 彼の名は 氷澤 澪(ひさわ れい)。 端正な顔立ちでクールなのでよくモテるのだが本人に特に興味はないのか相手にしてないようだ。 「あぁ……澪、来てたのか」 飲み終わった紙パックを律儀に折り畳みながら、隆也は今気付いたかの様に話し掛けた。 「……あぁ。額は、大丈夫か?」 クールな表情は崩してはいないが、澪なりの優しさが垣間見える。 隆也と澪は生まれた時から近所に住んでおり、双子のように育てられてきた。 そのためか、他人に興味を示さない澪も、隆也とその親友達には心を開いている。 瑞穂は、隆也達3人と中学2年からずっと同じクラスになり、いつの間にか一緒に行動を共にする事が多くなっていた。 男女共に高い人気があるが、本人は気付いてない様子。 「さてと、全員揃ったな。さぁ行くか!!」 速人が元気よく片手を突き上げて言った。    
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!