第一章 始まりの妄想

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 その時、枕元の携帯が鳴った。 「はい、あ……加奈?」 (あ、加奈? じゃないでしょ! いま何時だと思ってるのよぅ、打ち合わせするって言ったじゃない) 「え? あああっ! ご、ごめん!!」  高前加奈。  大学時代の同人仲間であり、処女作の原稿を出版社に無許可で投下した張本人。  今現在の悠里の編集担当者で、スーツの似合うできる女だ。  この彼女こそが今の悠里を作ったといっても過言ではなかった。 「ごめん、今から用意してすぐに行くから!」 「ほんとにあんたって昔から時間にルーズのなところは変わってないんだから、じゃあ二時にうちのカフェテリアでね」  何気なくぼんやり起きたが今日は悠里が出してる本の出版社、大海出版で加奈と打ち合わせの約束をしていたのだった。 「はぁ、急がなきゃ……」  悠里は重い腰をあげてカーテンを全開した―――。
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