1660人が本棚に入れています
本棚に追加
その時、枕元の携帯が鳴った。
「はい、あ……加奈?」
(あ、加奈? じゃないでしょ! いま何時だと思ってるのよぅ、打ち合わせするって言ったじゃない)
「え? あああっ! ご、ごめん!!」
高前加奈。
大学時代の同人仲間であり、処女作の原稿を出版社に無許可で投下した張本人。
今現在の悠里の編集担当者で、スーツの似合うできる女だ。
この彼女こそが今の悠里を作ったといっても過言ではなかった。
「ごめん、今から用意してすぐに行くから!」
「ほんとにあんたって昔から時間にルーズのなところは変わってないんだから、じゃあ二時にうちのカフェテリアでね」
何気なくぼんやり起きたが今日は悠里が出してる本の出版社、大海出版で加奈と打ち合わせの約束をしていたのだった。
「はぁ、急がなきゃ……」
悠里は重い腰をあげてカーテンを全開した―――。
最初のコメントを投稿しよう!