Chapter2

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 加奈と待ち合わせているカフェテリアは五階にある。  エレベーターに乗り込み、中に貼り付けられている「愛憎の果て」というタイトルのポスターが目に入ると自分の作品がこうして形になるのを嬉々として眺めた。 「あ、すみません! 乗ります」 「あ、はい……」  その時エレベーターにひとりの女性社員が乗り込んできて、悠里は顔を隠すように俯いて隅に寄った。 「この本読みました? いいですよねぇ! 私、ユーリのファンなんです」 「……え」  ユーリは悠里のペンネームだ。  悠里は一切の雑誌取材を断り続けている。 だから顔なんて世間にバレるはずがないのに、この人は自分がユーリだということを知っててあえて言っているのだろうか?  「そ、そうですか……」  悠里はひたすら俯きながらこの社員がとっとと降りてくれることを祈ったが、結局五階まで一緒だった。 『だから出版社に来るのは嫌なんだ……』  できれば一日中妄想に浸っていたい、時にはいいネタになる時もある。 悠里はそんなことを思いながらそそくさと五階で降りた。
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