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 一瞬空気が死んだ。  わたしも、自分がいったわけじゃないのにヒヤッとしていた。 「は……? なにムキになってんのー。真白」  恵理香はからからと笑ったが、目が笑っていなかったことにみんな気づいていた。  バカだなあ、恵理香に逆らうなんてバカだなあ、と思ったわたしは、そのときもう恵理香という宗教みたいなものに洗脳されていたのだと今では思う。  真白ちゃんが居場所をなくすのに、さほど時間はかからなかった。  次の日はグループから外される程度で済んだが、段々、日がたつにつれ、それは軽い嫌がらせに変わっていった。  下駄箱を悪戯したり、教科書をゴミ箱に捨てたり、バイキン扱いしたり、掃除当番のゴミ捨てとか、誰もやりたがらない委員会とかいやな係りは真白ちゃんに押し付けられた。  初めはなきそうな顔で、なにか言いたげに睨む真白ちゃんだったが、段々と冷ややかな目でまっすぐに恵理香やわたしたちを睨むようになった。  わたしはその目をみるたびに、ちがうの、わたしはやってないんだよ、といいたくなった。  実際、わたしなんかは恵理香がやることを笑ってはやし立てるだけで、いやがらせそのものをやっているのは恵理香といっちゃんだった。  でも、そんなものなんの気休めにもならないことを知っている。  ただの言い逃れだってことを、知っている。  わたしもいじめているうちの一人なのだ。主犯か、そうじゃないか、それだけ。
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