第二話 占い中華料理屋

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「ここじゃないの」 「とりあえず入ってみるか」 夜もとっくにふけていて目の前の国道を走る車のヘッドライトが眩しい。 場所は三重県鈴鹿市のとある中華料理屋。 まりのたっての希望で訪れたのである。 車を降りてその店を見ても特別な雰囲気は感じられない。 ただの中華料理屋にしか俺には見えなかった。 「いらっしゃいませ」 どう見ても普通の中華料理屋である。 ただラーメン好きの俺にとっては種類の豊富さや麺の太さなども選べるとこが気に入った。 熊本ラーメンなんてこの辺りではマイナーなラーメンもある。 (変わった店だな) 俺の視点は占いから完全に外れていた。 食欲でしか店内を見ていない。 「ねえ、あそこほら」 まりが見ている方を振り向くと、カウンターで男の店員がお客に何か喋っている。 (あの男が占い師か) 言われて見れば何か落ち着きのある風貌で、それっぽい。 でもどうせお決まりの当たり障りのないことしか言わないだろうと思った。 はっきり言って占いより、食欲だ。 「ご注文は?」 あれこれまりと喋っていると、店員がきた。 これまたどー見ても普通の店員である。 「あのー、占いやってくれるって聞いたんですけど。」 「ええ、ただ3人くらい待ってますので」 その女の店員はそう言って、俺達の注文を聞いて去った。 俺はツマミを先に頼んで、メインはトンコツラーメンでまりはチャンポンを選んだ。 「これも聞いてみようか」 まりが携帯の写真を出してきた。 伊勢神宮で二人して撮った写真だが、ちょっと変な影が写った写真である。 拡大してその影の不自然さに二人で首をかしげていたのを思い出した。 「後ろの人の服が写ってるだけだよ。考え過ぎ」 と言ってみたものの、改めて写真を見ると疑念がわいてくる。 まりが不思議がっているので、俺も何だか気になっていた。 ただ、インチキ占いだから納得する答えは返ってこないだろう。 「食べよか」 「うん」 うまいラーメンだ。 麺のコシといいツユといい、かなり腕がいい。 「こんばんわ、占い希望ですね」 きたきたと見上げると、さっきの注文を受けた店員が立っていた。 (あの男ではないのか) 拍子抜けして、やはり大した占いではないな、と思った。 一方まりは目を輝かして店員を見ていた。
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