第二話 占い中華料理屋

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「何を占いますか?」 「うちらの将来を聞きたいんですけど」 まあ、困難はありますが~とかのお決まりの文句を想像した。 「では守護霊に聞いてみます」 (守護霊?) 意外な展開にちょっと面喰らった。 そして店員は俺の方を見つめた。 正確には、俺の肩の辺りに目線がいっている。 (何を見ているんだろ) 店員は真剣な眼差しで俺の背後を見ている。 その眼差しが本当に何かを見ている風で、振り向こうかと思ったくらいだ。 背中がムズムズして、緊張してきた。 「あなたは少し頑固な所ありますけど、そこさえ直せばうまくいきます」 しばらく考えるんだろうという予想に反して、すぐに答えが帰ってきた。 (頑固は間違いないけどな) しかし、ありきたりの答えに現実に戻った。 やはり俺が予想した、当たり障りない占いなんだなと納得した。 「あなたの守護霊に聞いてみます」 店員はまりの方を見て、また同じようにまりの背後を見ている。 (はいはい) 俺は緊張から解放されてラーメンをすすりながらやりとりを見ていた。 (やっぱり頑固っぽく見えるんだな) 表情のイメージから占いしたのだろう。 確かに頑固だとたまに言われることもある。 そういう視点から見ると、ある意味プロだなと思った。 (これで無料なら損ではないな) そう思った瞬間にまりの目から涙がこぼれているのに気づいた。 「いろいろ苦労あったんですね。でも悪い方に考えちゃ駄目ですよ」 店員は優しくまりに語りかけている。 「いい方に考えれば、いい方に向かいますよ。」 俺はそっと涙を拭くティッシュをまりに差し出した。 本当に人を見てるな、と思った。 店員が話すことはありきたりの言葉であったが、今の俺達の境遇にピッタリ収まる話だった。 「守護霊って見えるんですか?」 まりが素朴な疑問を投げかけた。 「はい、見えますよ。そこにいます。」 と、店員は俺の肩の辺りを見た。 「守護霊は一人に一人絶対についています」 店員は静かな口調で語り始めた。 「あなたはフランスの貴婦人が守護霊ですよ」 店員はまりに向かってそう言った。 「あなたは宣教師が守護霊です」 俺の守護霊は宣教師だそうだ。 「人は皆、守護霊の導きによっていろんな使命を持っているんです」 店員は真剣な眼差しでこちらをみている。
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