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「俺の使命って何ですかね?」
「人に何かを伝えることですよ」
店員が言うには、宣教師として何かを人に教えるのが俺の使命らしい。
実をいうと、小さい頃からの夢があって趣味の空手や将棋の先生になりたいなあとずっと思っていたのだ。
(今考えたにしては出来過ぎだな)
偶然が重なると偶然とは思えなくなる。
俺の中では、この占い師の言うことを信じることが出来るようになっていた。
「あなたは、人に愛を与える使命を持っています」
その言葉を聞いて、まりはまた泣いてしまった。
泣いた理由が俺には分かった。
まりは子供や、愛する人を自分を差し置いて大切にしてきたのだ。
それが過ぎて倒れたこともあった。
「ついでにこの写真も見てもらえますか?」
真剣に俺は聞いた。
「これですか…これは宣教師のマントが写り込んでいるんですよ」
店員はニコリとして答えた。
何故か疑念は出てこずに、自然と納得出来た。
「もういいですか?」
「ありがとうございました」
俺とまりは深妙に頭を下げた。
店員はすっと振り返り、お客さんが来たのか いらっしゃいませ~とか言っている。
「俺らのこと知ってなきゃ、ここまで当たらないよね」
まりはうんうん、と頷いている。
「いい方に考えれば、うまくいくんだってさ」
「うん、きて良かった・・・んでさあ、私、確か・・・」
まりが何かを思い出したように、カバンをさぐり始めた。
「あった」
取り出したのは綺麗なビンに入ったブランドの香水だった。
「見て」
俺は差し出された香水を手にとった。
「私昔からこれしか使わないのさ」
まりはキラキラした目で言った。
そう、この香水はフランスの香水である。
俺はまりと目を合わせて、微笑み合った。
「あの店員さん、本当に見えてたかもね」
「だね。占いもバカにはできないな」
会計するときに店内を振り返って見てみたが、やっぱり普通の中華料理屋である…。
これは全て偶然だったんだろうか。
夢のような中華料理屋での出来事であった。
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