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『僕サプライズ好きなんだよ』
そう言うと彼女が神妙な顔つきで黙った。
何か言いたそうな顔で、そっぽを向いていた顔を僕の方に向けた。
『…もちろん、喜ばすほうのね。
意地悪とか常になんか企んでそうとか言うけど、案外僕は何にも考えてないよ。ただ、こういうことしたら喜ぶかなとか、うれしいかなとか、さ。そうやって考えてる間が楽しいから、サプライズしたいんだ』
何かいつもこの議題でもめるな。
そんなにダメなのかな。
と思いながら彼女の顔を窺いみると、まったくもうしょうがないなぁ、とへらっと力の抜けた笑みを浮かべていた。
『ほんと、圭介君は性質(たち)が悪いよね』
『それほどでも』
『…うーん。褒めてないからね、今の』
『じゃあ貶してるの?』
『別にそういう訳でもないけど』
もうっ!と彼女が緩くこぶしをつくって僕の肩より少し下あたりに当てた。
『……ごめんね、私が覚えてないのが悪いのにケンカ腰になっちゃって』
『いいよ』
『でもなぁ、私圭介君みたいに記憶力よくないし。どうやって覚えてようか』
カレンダーに書き込んだとしても、書き込んだことに安心して覚えてると思ってて結局彼女は忘れる。
『別に僕の記憶力が良いわけじゃなくて翼の―――』
『あーあー聞こえない。わかってるの!ちゃんと記憶力よくないって今言ったじゃん!』
『さっきのは僕と比較してっていう風に聞こえたけど』
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