強制恋愛:epilogue

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傍らに置いていた荷物を持って、寝室に向かって行った。 樹が洗面所で水を流している音をBGMに、ベッドの脇にあるクローゼットを開ける。 あらかじめ隠し場所にしておくために空けていた空間がぽっかりと姿を現した。 いたづら心というか、なんというか、こうやって準備しているわけだけど。 そんな用意周到なところがあだとなって翼に薄らとばれたのかもしれない。 なんてことを考えながら、空いているそこに、花がつぶれてしまわないように注意しながらそっと花束を置いた。 ふわりと買ったばかりの花の濃くて甘い香りが鼻腔をくすぐった。 『花束って…ほんと、圭介君って私より乙女思考、というかベタだよね』 毎年花束を贈るたびに彼女に言われる言葉が頭をよぎった。 別に何度言われたっていい。 贈るたびに彼女が嬉しそうに、幸せそうに微笑むんだから。 毎年それを穏やかな気持ちで過ごすのがほんとに―――。 「さて、張り切って作ろうかな」 わざと言葉に出して言うと、がぜん楽しい気持ちがむくむくと膨らんできた。 シチューにサラダ、デザートにプリン。 お酒好きの酒豪な彼女にとっておきのワイン。 食べ終わったらソファーで樹とくつろぐ彼女に花束を渡して…。 そこまでシミュレートして、ふっと笑った。 彼女が毎年僕に言いたくなる気持ちもわかる。 僕はベタが好きで、彼女を喜ばせるのが好きで。 ――――相当彼女を好きな気持ちで溢れている。 機嫌よく鼻歌を歌いそうな勢いで、部屋着に着替えるためと、手を洗うために洗面所に向かった。                                   -Fin-
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