強制恋愛:finger

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「・・・ん?」 「どうしたの」 「ううん、なんでもない」 ふと疑問に感じたことで無意識に口から声が漏れていた。チャイムが聞こえたから出迎えた、けど。 この男合鍵持ってるはずだろ! と二人でそう長くない廊下を歩きながら気づいた。 (合鍵・・・返してって言わなきゃ) 疑問に感じた内容で思い出した切り出さなければいけないことに心が沈んだ。 今日、言わなきゃいけない。 いつも別れろ、って言ってるんだからそれくらい・・・とか自分で思ってみるけど、きっと永井の手から鍵を渡されたら泣くかもしれない。 (やっぱり未練たらたらだ) 自分の意思が固まってないことが明白だ。 だからいつも流されるのかもしれない。だからいつも流されてることに安心している自分もいるのかもしれない。 流されるたびに怒る。 憤慨する”フリ”をする。 この人はまだ私と付き合う気がある。 ―――私のことを好きなのかもしれない。 そう考えて空しくなる。
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