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「ふーん、またはぐらかされたんだ」
「そうなの。あいつは私の言葉なんて聞いてないのよぉ」
ぐちぐちと飲んだくれながら焼き鳥を頬張っている友人に話す。
ダメだ。こいつも聞いてない。「ん~、うまい」なんて言いながら私がいないかのようにお酒を楽しんでる。
「なんでよ。浮気してんのはあっちでしょ。むこうから言い出さないから私が言ってんのに」
「ねー。本当はだーいすきなのに、そんな彼に毎回顔合わすたびに”別れて”って言ってつらいよねー」
「そうそう、つらいのよ・・・って違う!永井のことは嫌いになったんだから」
「はいはい。嫌いになる努力で彼のこと苗字呼びだもんねー。前は圭介君って呼んでたのにねー」
「違う!名前で呼ぶに値しないから苗字なのっ。それにどっちもあいつの名前なんだからどっちで呼んだっていいじゃない。語尾にハートをつけるな!」
「すいませーん、生ひとつ」
ほんと聞いてない。ってそれより、
「二つにしてください」
グラスに残っていたビールを飲み干して「ぷはぁ」と豪快に息をはいた。
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