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<別れの切り出し方講座>なるものを酒の勢いでとくとくと語られ続けて3時間後。
そろそろ帰らないと終電に乗れない、と我に返った酔っ払いを引き止めることなく現地解散になった。
お酒はおいしいし料理もおいしかった、それに楽しかったし。
どんなひどい別れ方を経験してきたのかはわからないけど、ネタとしか言いようのない話とかもあって笑った。
で、今はタクシーの中。
遠ざかっていくネオンの光、人、流れる景色。
それらをぼんやりと眺めながらタクシーの座席に背を沈める。
何かと話しかけてくる運転手さんが割と多い中、今運転してる人は何も話さない。静かだ。
耳は深夜ラジオのゆったりと話す女の人の声だけをとらえていた。
依然として視覚は景色をとらえたまま。
「・・・ぁ」
「どうされましたか」
「いえ、なんでもないです」
無意識に漏れた声に運転手さんが反応する。
その声には、道を間違えましたか、という意味が含まれている気がした。
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