僕は君だけ③

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そんなすずねを連れ回していたある日 改札を出たところで 森久保さんに遭遇した。 森久保さんは同じくらいの歳の女性と一緒だった。 相手が元カノだということはなんとなくわかった。 駅構内は混んでいたため、向こうは気づかなかったようだ。 僕はすずねの手を取り避けるルートを行った。 戸惑って僕を見るすずねの目にはかすかに涙が浮かんでいた。 駅から家までの帰り道、すずねが今までのことをを話した。 話し終えた後、すずねは立ち止まりポロポロと涙を零した。 今日森久保さんと遭遇したのは想定外だったけど、ようやく気持ちを貝殻のように固く閉ざしていたすずねが僕の前で泣いてくれた。 それが嬉しくて嬉しくて 僕はすずねの涙をハンカチで拭き、優しく頭を撫でた。 久しぶりに心の底からすずねに優しくできる気がする
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