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「女将さん、折角持ってきてもらって悪いがそこに置いといてくれねぇか?」
女将は一瞬意味が分かってないようだったがまたすぐ笑顔になった
「かしこまりました。また何かありましたら下におりますんで呼んでくださいね」
「あぁ、すまねぇな」
俺は扉の近くに置かれた食事二人分を取りに行った
やっと飯だ。結構うまそうじゃないか
気分よく食膳を並べてると今だに空を眺めていた姫がチラリとこっちを見た
二つ並べられた膳を見た姫は不満そうに口を開いた
「私はいらないって言ったでしょ」
「つまんない事言ってねぇで食べろよ。うまそうだぞ」
だが姫は興味なさげにプイっとまた視線を空の方へと戻してしまった
「食べないと無理やり押し込むぞ」
「・・・」
俺はおもむろに立ち上がり姫の所に向かった
「食べたくないなら最低これだけは食っとけよ」
そう言っておにぎり二つを姫の横に置いた
****
食事が終わり俺は膳を片付ける為に部屋を出た
「この膳を片付けたら出発だ。俺が帰ってくるまでに準備しとけよ」
姫にはそう言い残して来た
俺が戻ればいよいよ仕事だ
結局姫はおにぎりを食べることはなかった
「ありがとうございました。美味しかったです」と言って膳を返したあと少し立ち止まり自分の両手を見つめる
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