〈絶対復縁宣言!〉

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◇◇◇◇◇生徒会親衛隊総隊長 諏訪 月夜 『おい!!』 掛けられた声に、もしかしたら…などと、在り得るはずもない期待をこめて振り返って…。やはり貴方ではなかった、と諦めの悪い自分が可笑しくてーーー。逆光が縁取る人影がどんどんと崩れていくのを見ていた気がした まだ夢の中…、だったんですね 真っ白に変わっていく意識の狭間でそんなことを思っていた 幼いころに読んだそのおとぎ話は綺麗で哀しい物語 王子様に恋したお姫様は、足をもらって王子様の側で楽しい時を過ごします。でも足と引き換えに声を失ったお姫様は大切なことも伝えられないままーーー 何も知らない王子様は誰かと恋に落ちて…。お姫様は海の泡となって消えてしまいました 子供心に恋に破れ消えたお姫様を想うと切なくて悲しくてーーー、声を奪った海の魔女や王子様を非情だと思っていた。けれど… 勝手に恋して声を捨て脚を貰い何も伝えず王子様の命さえ奪えず、全て自分で選んで消えていったのはお姫様。我が儘で身勝手な… あぁ、私によく似ている 頬を微かに触れる感触にぼんやりと瞼を上げればまだ夢の続き。定まらない視線の先にーーー 「……月夜、大丈夫…か?」 気まずそうに目をそらし、それでもぶっきらぼうな中に心配の混じった声音。思わず頬が緩んでいく クスクスと沸き上がる笑いを抑えずにいれば不安の色合いが増したその顔 「貴方は、こんなにも優しい。だから良かったんです…。きっとーーー」 ゆっくりと自分に言い聞かせるように言葉を紡いで…。嘘ではない、でも本心なんかじゃない。今は辛くても、いつかそう思えるときがくるまで… 「笑って、ください…。眠る度に貴方の夢ばかり見る自分が情けなくて…、目覚めれば思い出す現実が哀しくて、眠ってしまうのが怖くて…。でもこうして夢の中、やっと会えたのにーーー」 眉間の深いしわに手を伸ばせばその指先をギュッと掴まえられ、そのまますぐ横に腰を下ろしてしまわれては見えるのは背中だけ 夢とはいえ、そう思い通りにはいかないものですね… それでも繋がったままの手をそっと握れば返ってくる感触と暖かさが嬉しくて。ずっとこのまま眠っていたいーーー、なんて身勝手な願いなんだろう
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