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すぐ側にあるのに遠い背中が呟く。貴方がどんな顔をしているかなんて今の私には分かるはずもない
「月夜…。ホントにいいのかよ?…もう、俺の事は…いらねぇか?」
「そう…、出来たらどんなにいいか。
あの方達の為に、私が出来る事であればどんな形でも良かった…。でも、南條さんとの約束や、何よりあの人の願いを叶えるには『親衛隊総隊長』でなければならなかったのです。その為に親衛隊や、貴方を巻き込んでしまってーーー
今更迷っているなんて虫が良すぎますよね…」
今になってーーー、迷うくらいなら始めなければ良かった…
「なぁ、お前はどうしたい?俺にどうして欲しい?」
言わないで…そんな言葉、優しい声。言ってはいけないことまで漏れてしまう
「言えません。たとえ夢でも…」
「ゆ、め…?…ったく、お前は夢ん中でも意地っ張りなんだな。いいじゃねぇか、俺しか聞いてねぇんだし。なぁ?」
呆れるようにため息を一つ。ほら、言ってみ?なんてねだられたらーーー、あれだけ駄目だと隠した想いが零れだしてしまう
「会いたくなかったんです、貴方にはーーー」
これが最初で最後なら、全部隠さず伝えたかった。まだ、繋がれたままの手が次の言葉を待っている気がして
「病気が治って、親衛隊総隊長になって。あの方達の、少しでもお役に立てればと思って頑張ってきました。南條さんとの約束も、あの人が叶えられなかった願いもーーー。親衛隊の皆さんを巻き込んでしまった後悔もありましたが、生徒会の皆様との信頼関係を築くお手伝いが出来れば…、多少なりと罪滅ぼしになるかと…
でも、貴方には何もお返しできません。あんなに良くして頂いたのに…、いつも貰うばかりで。一つも…、分からないんです…。どんなに頑張っても足りないんです…」
身体だって声だって…、貴方の前で弱いだけの私にはあっても無駄なだけで。ただ甘えていつか貴方の邪魔になるくらいならーーー
「そんな大事、なのか?返すとかそういうのって」
「それ、は…」
「よく分かんねぇけど、俺はお前に何も貸してねぇ。ただ勝手にお前を心配して勝手に傍にいて…それが気に入らなきゃ反抗すりゃいいし甘えたきゃ気が済むまで甘えろ。
俺は何も返されるものなんてねぇ」
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