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また強く握られた手が痛くて苦しくて、嬉しくてーーー、
「酷いこと言って、泣かせて悪かった…。その、あれだ。良かったら…、ケンカ止めねぇか…?初めての親子ゲンカにしてはヘビー過ぎで…、もう降参してぇんだけど?」
漸く振り返ってくれたその顔はばつの悪そうな…、なのに視界がぼやけてしまって。もっと見ていたいのにどんどん滲んでいってーーー。なぁ、返事ねぇの?と焦れたような囁きに、声にさえならなくて、何度も頷いて
「やっぱりお前は利口だな。で、相変わらずーーー泣き虫だ。なぁ?」
からかう声に慌てて触れた目元が濡れてて、途端に熱が集まる顔を隠したくて。首元の毛布を引き上げれば、その手まで捕まえられなすすべもなく…。言葉の代わりに不満を込めて睨んでも効果は無かったようだ
「んな恥ずかしがんな。お前の泣き虫なんざ今さらだっつーの。それより…、酷ぇツラ。また痩せってし…。
全部俺のせい、だよな。なぁ?」
覗き込むその目が本心を言うまで逃がさないと強く光って、降参するのは自分なのだと気付かされる
「はい…。たくさん泣いて、もう涙は無くなったと思ったんですけど…。桐島さんのせい、にしても…いいんですか?その…未だに貴方を怒らせてしまった理由も分からないのに…」
いつまでも隠し切れないと白状すれば眉を八の字にして不貞腐れた声で、あれは忘れてくれ…、と。私としては今後の為に是非知りたいのだけれど、唇が触れそうな距離で微笑むその顔にきっと教えてもらえないのだとーーー
あ、これは夢…なんでした、ね…
忘れてしまいたかった事実に、じんわり涙が滲んで。どうした?と不安げな声に更に泣きたくなってーーー
これが最後なら、我儘言っても……?
「ーーーもっと一緒に、いたいです」
にっこり笑った貴方の唇がおでこに触れて、離れる
「上出来、だ。なぁ?」
つられて笑えばたま返ってくる笑みに嬉しくてーーー
「ダメだ!!もうーーー、我慢できねぇーー!!」
ガタン!と、大きい音と聞き覚えのあるーーー…
真っ白な空間の一部を切り取るように現れたその顔に驚くばかりで…、状況が飲み込めず固まったままの私の上で桐島さんが怒りを露に舌打ちして一言
「…ッチ。空気読めよ、黒モジャ」
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