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「まさか奴隷商だったなんてねえ
騙されたよ!!
へえ～、だからさっきから
覆面の人がついてきてたのかあ～
あ!!
決して
『奴隷!?やった!!
もしかすると美人さんに
罵(かわいが)ってもらえるよ!!
よかったね、
いつかちゃん!!』とか
思ってないし、
『奴隷になるお姉さんとか
萌えるから見たいなあ～』とか思って
あえて捕まった訳じゃないよ!?」
私たちの人権の危機というのに
おちゃらけたことを言って
笑っている
この苛つく人間のオスが
黒枝さんです。
わけあって……
ということが普通の人なら理由になりますが、
この人の場合、
“理由はないかもしれません”が
私の食用の人間を提供してくれる人です。
人間側からみると人間的倫理観を完全に無視している外道ですけど…
今はそんな外道な様子を見せずに
黒枝さんの
アイデンティティである
黒いジャケットを脱がされて
白いワンポイントTシャツに
ジーパン姿という
少し弱々しい姿で
体育座りをしています。
…『あえて捕まった』と
とんでもないことほざいてた
気がしましたが…
きっと気のせいでしょう。
「みてみて!!
髪の毛から砂が
いっぱい出てきた!!」
黒枝さんはそんな話にすら
飽きたようで
自分の黒い短髪で
小学生のするような遊びをし出しました。
２２歳の大人なのに…
かくゆう私も左目を隠すくらい伸びた自分の前髪を
いじって暇を潰しているのですが…
なにが黒枝さんをそんなに
余裕綽々にさせてるんでしょうか…
私はいざとなれば
きっと白馬には乗れないであろう
黒枝さんが大人の義務で
助けてくれるはず…
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