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「なあ、このクラスまで来る風紀委員ってのはどうやって決めるんだ?」
「さあな、そんなの知るかよ。案外志願制だったりしてな」
「そ、そこはくじ引きとかランダムじゃないのかよ。いや、そうに違いない」
もはやそうであって欲しいという願望が滲んでいる言葉だった。
「何だよ変なヤツだな、それにもしかするとだお前の姉御が」
「やめろ、その先を言うんじゃない!!」
薫が叫んだのを待っていたかのように威勢の良い音を立てて教室の扉が開かれた。
そう、この狙いすましたようなタイミング。舞台で絶対絶命の危機に陥った弱者を助ける正義のヒーローが登場するかのごとき間の良さ。
他の誰でもない、夕鶴の登場だった。正義のヒーローとしてではなく、弱者をどん底に叩き落す役目としてなのだが。
そして教室はというと、突然の侵入者に静まり返っていた。ある者は怪訝な目で、ある者はその容姿に目を奪われ、またある者は腕についている風紀委員を示すバッジを目にして凍りついた。
薫は声をかけるべきか迷っていたが、結局沈黙の末、視線だけを向ける事にした。
夕鶴は薫の方を一瞥しただけで何の反応も示さず教壇に立った。
そんな風にクラス中の注目を集める夕鶴は、今まで薫が一度も耳にしたことのない冷徹な声音で語り始めた。
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