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私──ルーシェ=ブランは、至って普通の人間だ。
家も貧しくもなければお金持ちという訳でもない、平々凡々な家。 父は農家の次男坊で、今は母と一緒に母の夢だった服屋を手伝っている。
家系図を辿ればどこぞの貴族や大罪人などに繋がる、何て事もない。 本当に何の変哲もない平民の家だ。
でも私はそんな家で良かった、と今でも思っている。 お姫様に憧れると言った友達もいたけど、私は籠の中の綺麗な鳥より、薄汚れていても自由な鳥でいたかったからだ。
そんな私が、取り立てて優れた所も無い私が、記念にと受けた超名門の央都セルクル中央学園に合格したと通知が来た時は、夢でも見てるのかと思うくらいにびっくりした。 母なんて卒倒してしまったくらいだ。
村の友達は皆私の事を祝ってくれて、近所のお婆ちゃんは泣きながら我が事のように喜んでくれた。 無論、私もとても、とても嬉しかった。
いざ央都へ旅立つ日も、村の人総出で送り出してくれたし、央都に着くまで馬車の中で期待と不安でそわそわしていたのも覚えている。
けれど入学して一月が経とうとしている今、私はその頃の喜びも期待も露と消え、どうしようもなく後悔していた。
私はこれまで何かをしてどうしようもなく落ち込んだ事なんてほとんど無かった。 一度不注意で家の窓ガラスを割ってしまったことがあるけど、そのくらいだった。 我ながら幸せな環境にいたのだと、今更ながらに痛感するほどに。
その私が、今はどうしようもなく後悔している────何で、この学園に来てしまったのだろう、と。
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