序章

3/9
前へ
/40ページ
次へ
── ──── ────── 事の発端は、ほんの数分前の自宅での出来事である。 訳あって両親とも家に居らず、また本来いるはずの女中たちも無理矢理両親について行かせた為に、俺は広大な武家屋敷と言った様相の自宅に一人で住んでいた。 が、一ヶ月程前から新たに加わった居候……俺と契約した八人(匹?)の竜たちのお陰で平穏とは程遠い日々を送っていた。 そんなある日曜日の朝。 学園も休みで“お役目”の予定も無し。 久々に惰眠を貪ろうとしていたのだが、配下の騎龍の一人・晶竜のセンに叩き起こされて朝から不機嫌さがマッハだった。 俺は自分のする事は自分で決めたいタイプであり、寝ると決めたからには寝たかったのだ。 だが生真面目なセンにはそんな言い分は通用せず、逆に「早寝早起き、規則的な生活から日々の健康が云々」と長々と説教を食らう羽目になった。 その為朝から微妙にイライラしつつも彼女の作った朝ご飯を平らげ、常の白い着流し姿に退魔刀・神威を引っ提げて(何をするか)と家の中をぶらぶらしていた、そんな折だった。 中庭に面した鶯張りの廊下の角を曲がろうとした時、丁度その角からこちらに曲がってきた誰かとぶつかってしまった。 「うおっ、っと」 「…………っ」 先に言った通り、この廊下は鶯張りであり、歩く度に廊下が軋んで音を立てる。 だから気をつけていれば近づいてくる音に気づいたはずだが、俺も、また俺にぶつかった相手もぼーっとしていたらしい。 ばつが悪くなり、ぶつかった相手に向き直って一言詫びを入れようとし、そこで俺は相手が誰だったかに気づいた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加