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……で、次に気がついたらこの状況だった、と。
そこまで振り返ってみて分かるのは、恐らく俺のしでかした事であのマジックアイテムが起動してしまったであろう事。 そして俺の精神と魂が肉体から抜け出てしまったであろう事。 あの真芯を引っこ抜かれるような感覚がそれだろう。
だが、そこまでしか分からない。 ルナはあれを擬似幽体離脱を起こす物だと言っていた。 なら、抜け出た精神体は元の場所に現れるのではないのだろうか? 俺がいたのは間違いなく自宅であり、こんな体育館(?)ではない。 と言うかこんな場所を俺は知らない。
はて、と内心首を傾げていた俺だが、自分のすぐ近くに人がいた事に気づき、そちらに目を向けた。
近く、と言うか目の前である。 俺の正面、三メートル程離れた場所に一人の女生徒(仮)が、その隣にジャージ姿の若い女教師(仮)が立っており、周りの生徒(仮)が遠巻きに眺めて口々に何かを言っていた。
と、そこで俺は目の前に立つその女の子の足元が普通の床ではない事に今気がついた。
材質が違うと言うわけではない。 だが、少女を中心とした直径一メートル程の幾何学的な模様を内包した円形図は、所謂“魔方陣”と呼ばれる物に俺には見えた。
色は、紅。 ……いや、血色と言うべきだろうか。 俺が有する神能・存在系を行使する際に発生する属性光と酷似した色合いの魔方陣は、微弱な光を放ちながら少女を照らしていた。
何だこりゃ、と思いつつ視線を自分の足元に移すと、全く同じ物が俺の足元を中心に広がってる事にも気づいた。 と、その時、天恵のように俺の脳裏にある仮説が閃いた。
周囲にいる異形を従えた少年少女。 俺と同じ形、色の魔方陣に立つ少女。 見た事もない風景。 これらの情報から俺の置かれた現状を判断させる知識が、俺の中にはあった。 まぁまず間違いないだろう、と言う確信を伴って。
辟易としながらも、俺はまず言語が通じるかどうかも分からないが、目の前の彼女らとの意思疎通を図ってみる事にした。
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