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不老不死のおかげで、青年には何も恐れる事はなくなった。金にだって困らない。金の使い方も日を追うごとに荒くなる。当然、無茶な遊びにも手を出したりもする。何せ、不老不死なのだから、命の心配をする必要もなかった。
ただ、青年には気になることがあった。豪勢な遊びが招いたのか、時々、人に襲われるのだ。理由は分からないが、奇襲を受け何度も致命傷に及ぶ程の怪我を負わされる。警察に被害届を出そうにも、すぐに完治してしまうような身体では、襲われたという証拠となる傷口まで消えてしまうので、信用などしてもらえない。
女や金で気を紛らわしていても、すぐに襲われ殺されてしまう。
今頃になって、女ではなく痛みや苦しみを感じないようにしてくれと頼むべきだったと青年は後悔するのだった。どんな致命傷を受けても死ぬことは決してない。だが、痛みと苦しみは毎回、自分を襲ってくる。注射器の針の痛みにいつまで経っても慣れない人と同じだ。
この痛み、苦しみから逃れる手段はない。悪魔を喚んで、不老不死を解除してもらうのが一番いいのだが、今更、そんなことはできない。せっかくの不老不死を手放したくなかった。
(思わぬリスクがつきまとったものだ)
青年は襲われて怪我が治るたびにそう思うのだった。
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