粉雪

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「綺麗なひとだな」 と、いうのが最初の印象だった。 ただし、 「キチンとした格好してれば、多分」 との括弧書きが付いたのだけど。 俺が雪さんを初めて見たのはもうずっと前のこと。 その後のやり取りから考えると、どうやら彼女はその時の事をおぼえていないようだった。 お母さんの付き添いで病院を訪れていた雪さんは、鼻をかんであげたり耳を寄せて丁寧に話を聴いてあげたりと献身的に動きながらも、動きの芯にどうしようもない疲れが溜まっているように見えた。 俺はそれを見るともなしに眺めながら、ウチのお袋も親父の介護してる時はあんな感じだったんだろうか、などとぼんやり考えていた。 風邪をこじらせて肺炎を発症し、前日から入院していたお袋を見舞った時のことだった。 お袋は眠ってしまっていたが、次のシフトまでまだ少し時間があったため、俺は待合でぼんやりと時間を潰していた。 日中の総合病院は人でごった返している。 それも外来ばかりではなく、車イスや点滴スタンドを押して歩く入院患者もいるので尚更、混沌としてくる。 そろそろ行こうか、と思った時、小さな子供が泣き声を上げながらよちよちと覚束ない足取りで歩いているのが目に入った。
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