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椿鬼の歩くペースが段々遅くなっていることに、航輝はふと気づいた。
「椿ちゃん……疲れたの?」
航輝は椿鬼と繋いでいた手を放し、椿鬼の顔色を伺う。
その表情は曇っていた。
「大丈夫?」
「……大丈夫っ!」
椿鬼は曇った表情を無理矢理明るくさせて言う。
「俺ん家近いからさ、ちょっと寄って休んで行こうよ!」
「……」
航輝は椿鬼の手を引き再び歩き出す。
「俺ん家は神社なんだよ……だから誰でも歓迎してくれるよ!」
「……神社……」
航輝の言葉に椿鬼は青ざめた。
「……やっぱりどうしたの?
顔色悪いよ椿ちゃん……」
「いや……」
椿鬼が答えられずにいると、神社の鳥居がすぐ目の前に迫ってきた。
「俺ん家ここ!行こう!」
航輝は椿鬼の手を引き鳥居をくぐった。
バザッ!
「っ!?」
すぐ後ろで中身の入ったビニール袋が落下する音……そして、航輝が掴んでいた椿鬼の手の感触がするりと抜けた。
振り返ると、椿鬼の姿はなく……肉の入ったビニール袋が地面に転がっていた。
「──椿ちゃん……?」
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