椿鬼と宮家の少年

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「ちぇ……何だよ……」  航輝は薄暗い雪の中を買い物をしに歩いていた。  母親は、昔から手を出すのが異様に早かった。  神主である航輝の父親ですら、母親にいつも叩かれている。  神主とは一体何なのだろう。  宮家とはどれほど由緒ある家庭なのだろう。  航輝の頭の中がぐるぐるとその疑問で埋めつくされる。 「えっと……」  航輝は母親にぐちゃぐちゃに握り潰された紙を丁寧に開く。  そこには、なにを買うのかが母親流の殴り書きで書かれていた。 「……毎度毎度読めねぇ……」  航輝は芸術的な母親の殴り書きにげんなりとする。  すると、 「それはね、『お肉、人参、椎茸、白菜、白滝、豆腐』って書いてあるんだよ」 航輝と同じぐらいの年齢の女の子の声が航輝の耳に届いた。
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