椿鬼と宮家の少年

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「……ぇ?」  航輝は声がした方向に視線を向けた。  そこには、黒くて長い綺麗な髪をした着物姿の少女が雪の上に座り込み航輝をじっと見つめていた。 「……誰……?」  航輝は少し警戒して少女に問い掛けた。  少女の年は航輝と同じぐらい、雰囲気も幼い女の子そのものである。  しかし平成のこのご時世、着物をここまで自然に着こなす女の子は航輝も見たことがない。 「……私の名前は『椿鬼(つばき)』」 「椿? かわいい名前だね」  航輝が名前を褒めると、椿鬼は嬉しそうに頬を赤く染めた。 「……ありがとう」  そして航輝はふと気づいた。 「……あれ」  航輝は椿鬼の後ろで咲き乱れる赤い花を指さした。 「これは……雪椿だよ」  椿鬼は雪椿を触ろうとする。 「ダメだよ!」  瞬間、航輝は椿に駆け寄りその腕を掴んで雪椿から遠ざけた。
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