ひ(るドラ)な祭り

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ワライ上戸は段を登る。 五人あらし……五人囃子の段を越え、右大臣と左大臣の段にさしかかった所で双方大臣に止められた。 「手前、如何様か?!」 「はは、ワライ上戸です」 ワライ上戸がひざまづくと右大臣が細かくてどうでもいい部分をわざわざとがめた。 「はは、とはかしこまってはは、なのか、軽く笑ってはは、なのか、どっちだ今のはは、は?」 「はは、…は?」言いかけたワライ上戸は思わず顔を上げた。 「右大臣は口を閉じとれ。手前、何用じゃ。ここは庶民が立ち入る場ではない」 「左大臣様、一目でよいのです、お雛様に会わせて下さい」 「庶民が拝めるものではない。段を降りよ」 「よりすぐりの話があるのです」 「ならばここで申されよ」 「よいのですか?」 五人囃子の件が頭をよぎった左大臣は言葉を変えた。 「……耳打ちに留めよ」 「コソコソ」 「ふむ、通るがよい」 「左大臣様?!」 「わしはお雛様の側近。姫君が不幸せならば、それは大問題である」 「何の騒ぎだ左大臣!」聞きつけたお内裏がついに口を開いた。 「お雛様ぁ!!」 「何者だあの男は?!」 大手を振るワライ上戸を見るやお雛は慌てた。 「ワ、ワライ上戸! 日中に来てはならぬとあれほど!!」 お雛の様子を見て察したお内裏は杓で指した。 「お雛よ、私に内密であのふらちな庶民と密会とはげせぬの!」 「お、お内裏様」戸惑うお雛。するとワライ上戸が更に一段上がり、鋭い一言をお内裏に浴びせた。 「お内裏様こそ、そこのお歯黒と日没後だけ仲が良いとは御都合様ですな!」 「ひっ!?」お歯黒が反応した。 「き、貴様か密偵は!」たじろむお内裏。その表情は愛憎の事実を物語っていた。 ワライ上戸は最後の段を上がった。お雛を前に、お内裏の目の前に立ちはだかって物申した。 「私はあなたとは違います! 私は、私こそがお雛様を幸せに出来る男なのです!」
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