Luxuria

4/25
前へ
/103ページ
次へ
それから、『色欲の悪魔』はギュッと目を瞑ったが、何も起こらなかった。 ゆっくりと目を開けるのと、ほぼ同時に部屋の明かりが付き、再び目を瞑る。 「…もう、何もしないから」 彼はそう言って、『色欲の悪魔』の上から退いた。 「ただ、聞きたいことがあるんだけど…」 彼は『色欲の悪魔』の肩にゆっくりと手を置いて、耳元に口を寄せた。 「正直に答えてくれれば、何もしないから…ね?」 「…あ、あんたも…し、『色欲の悪魔』…なのか?」 『色欲の悪魔』が耳を抑え、赤面しながら、彼に尋ねた。 彼はクスリと微笑むと、小さく首を振った。 「俺は違うよ、俺は影の悪魔だ」 そういった彼の背後の影は、人の形をしていなかった。 まるで、豹のような姿だった。 「そういえば自己紹介がまだだったね」 彼はそう言うと、再び部屋の明かりを消した。 彼の赤い瞳だけがこの部屋を照らす。 暗闇の中で彼は微笑みを浮かべた。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加