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それから、『色欲の悪魔』はギュッと目を瞑ったが、何も起こらなかった。
ゆっくりと目を開けるのと、ほぼ同時に部屋の明かりが付き、再び目を瞑る。
「…もう、何もしないから」
彼はそう言って、『色欲の悪魔』の上から退いた。
「ただ、聞きたいことがあるんだけど…」
彼は『色欲の悪魔』の肩にゆっくりと手を置いて、耳元に口を寄せた。
「正直に答えてくれれば、何もしないから…ね?」
「…あ、あんたも…し、『色欲の悪魔』…なのか?」
『色欲の悪魔』が耳を抑え、赤面しながら、彼に尋ねた。
彼はクスリと微笑むと、小さく首を振った。
「俺は違うよ、俺は影の悪魔だ」
そういった彼の背後の影は、人の形をしていなかった。
まるで、豹のような姿だった。
「そういえば自己紹介がまだだったね」
彼はそう言うと、再び部屋の明かりを消した。
彼の赤い瞳だけがこの部屋を照らす。
暗闇の中で彼は微笑みを浮かべた。
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