近所のお姉さん。

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「お前、それ、本気で言ってるのかよ!!」 親友のタカシが、俺に向かって怒鳴る。 「本気だ。」 そういうと、タカシが俺の胸倉をつかんだ。 「姉ちゃんは…東京に行くんだぞ!」 「……………………」 「お前が、ずっと、ずっと、ずっと、大好きだった、 姉ちゃんが東京に行くってのに……! お前はいつまでそうしている気だよ!」 「今はまだ、ダメなんだよ。」 タカシの姉、美雪。 家が隣だったから、 必然的にオレとタカシは幼稚園の時から仲良くなった。 そして、タカシがお姉ちゃん子だったこともあり、 俺は、四つ年上の美雪さんと仲良くなり、 当時はみゆ姉ちゃんと呼んでいた。 初めて会ったとき、美雪さんはすでに小学3年生で、 5歳だった俺から見れば、十分に完璧な姉だった。 小学校に上がった時も、美雪さんは高学年で完璧な姉。 中学に入ったときはもうさすがに『美雪さん』と呼んでいたが、 美雪さんは高校生で、完璧な姉。 そういえば、俺が美雪さんと呼ぶたびにクスクス笑っていた。 そして、高校に入ったとき、美雪さんは成人していた。 今年、俺は高校を卒業し、美雪さんは、大学を卒業して東京へ行く。 今日は、その出発前夜。 俺の部屋でタカシが怒鳴りだしてから、もう1時間は経過している。 「見損なったよ、お前のこと。」 タカシは、掴んでいた手を放して、そう言った。 「絶対後悔するとか、そういうことを言うつもりはないけどさ… お前、みっともないよ! ケジメの一つもつけられねぇ奴だとは思ってなかった!!」 「んだと…!」 「ちょっとータカシ、ショウタ、入るよー」 タカシに何かを言い返そうとしたとき、美雪さんの声が聞こえた。 「タカシ、ちょっとショウタ借りるわね。」 「おう」 「え、ちょっと待てよ、別にここでもいいだろう!」 「私がイヤなの。ちょっと散歩しよ。」 美雪さんは、そういって俺の手を引っ張って、部屋の外に連れ出した。
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