近所のお姉さん。

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「おばさん!ちょっとショウタ君借ります!」 「はーい、料金はいらないわよ~」 「俺は商品かよ!!」 玄関でそんなやりとりをしたあと、靴を履いて家から出た。 「ちょっと、河原の方に行こうか。」 「うん。」 無言で15分ほど歩くと、川が見えた。 「タカシが迷惑かけてごめんね、いつまでも子供でさぁー」 「そんなことないよ。 アイツ、美雪さんのことだと見境なくなるんだ。 あれでも、結構女の子にモテてるよ。」 「やっぱり私のこと話してたんだ・・・」 「………うん。」 「メールでも言ったけど、私、東京に行くんだ。」 「うん。」 「ショウタは、地元の大学に行くんだよね。」 「美雪さんの後輩になるんだ。」 「そうだね……。 ねぇ、ショウタにとってはさ、私って、ただの姉なのかな? それとも、ご近所さんのなのかな?」 「……………」 正直に言うと、どちらでもなかった。 俺は、一人の女性として、美雪さんが好きだ。 「ごめん、意地悪な質問だったね。」 「いいよ、確かに俺たちの関係って微妙だもんな。」 「うん…。あの…さ、私、好きな人がいるんだ。」 「俺も…いるよ。」 「そっか。」 「美雪さんが好きになるような人だ、立派な人なんだろうな。」 「そうでもないよ。全然私の気持ちに気づいてくれないし、年下だしね。 ショウタこそ、どんな人なの?」 勿論、美雪さんの気持ちに気づいている。 ただ、今はまだ…ダメなんだ。 「完璧な女性だよ。非の打ちどころのない女性だ。 もうすぐ、東京へ行くらしい。」 「そうなんだ…」 「大学を卒業してさ、胸を張って、 『俺はこんな男になったんだ!』って、 大きな声で言えるようになったら、気持ちを伝えようと思うんだ。」 「それまで、待っててくれないかもしれないよ?」 「待っててくれるさ。俺はその女性を信じてる」 「そう…。じゃ、そろそろ戻ろうか。冷えてきちゃった。」 「そうだね。」 次の日、美雪さんは東京へ旅立ったけど、 いつかきっと、美雪さんを幸せにする。 心の中で、俺はそう誓った。
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