プロローグ 始まりの邂逅

4/20
前へ
/111ページ
次へ
侮っていたつもりはなかった。 己が持つ全力を駆使したはずだ。 その結果は、 「…………やっちまいましたね」 そう呟いたのはシルヴィアだった。 彼女の右腕は手首から先が『折れていた』。 その上、肘辺りまで『凍っていた』。 異常な氷だった。 痛みはなく、壊死するでもなく、ただただ凍っているのみ。 「青のエネミーから逃げるためとはいえ、自分の腕を叩き折るなんてやりすぎでしたかね」 「なんでシルヴィアは、そう、無茶なことをやるんですか!?」 そう叫んだアイリも無事ではなかった。 全身は軽く火傷しており、右目は『焼き潰れていた』。 こちらも痛みはなく、副次的な被害もなかった。 もちろん、右目は見えないが。 「シルヴィア!? 聞いているんですか!?」 「こうしないと全身が扉の向こうにいる青のエネミーにやられちまったでしょうし」 適当な調子で答えたシルヴィアは、 「ここは二階の小部屋。とはいえ、この危機的状況をどうにかしないと死ぬのは確定ですがね」 吐き捨てるようにそう言ってから続けてこう言った。 「ですから、ここらで情報の整理をやっちゃいましょうか。どうせ身動きはとれそうにねーですし」 「…………、突破口の一つでも見つかればいいですけど」
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加