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侮っていたつもりはなかった。
己が持つ全力を駆使したはずだ。
その結果は、
「…………やっちまいましたね」
そう呟いたのはシルヴィアだった。
彼女の右腕は手首から先が『折れていた』。
その上、肘辺りまで『凍っていた』。
異常な氷だった。
痛みはなく、壊死するでもなく、ただただ凍っているのみ。
「青のエネミーから逃げるためとはいえ、自分の腕を叩き折るなんてやりすぎでしたかね」
「なんでシルヴィアは、そう、無茶なことをやるんですか!?」
そう叫んだアイリも無事ではなかった。
全身は軽く火傷しており、右目は『焼き潰れていた』。
こちらも痛みはなく、副次的な被害もなかった。
もちろん、右目は見えないが。
「シルヴィア!? 聞いているんですか!?」
「こうしないと全身が扉の向こうにいる青のエネミーにやられちまったでしょうし」
適当な調子で答えたシルヴィアは、
「ここは二階の小部屋。とはいえ、この危機的状況をどうにかしないと死ぬのは確定ですがね」
吐き捨てるようにそう言ってから続けてこう言った。
「ですから、ここらで情報の整理をやっちゃいましょうか。どうせ身動きはとれそうにねーですし」
「…………、突破口の一つでも見つかればいいですけど」
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