プロローグ 始まりの邂逅

8/20
前へ
/111ページ
次へ
「…………ふざけんじゃねーですよ」 こんなことを言っている場合ではないことはわかっていた。 それでも動き出した口を止めることはできなかった。 なぜアイリが急に『諦めた』のか。 その理由は考えればすぐにわかることだった。 「こ、の、ばか……アイリ……ッ! 私を助けるために―――ッッ!!」 「じゃあねって言いましたよね? 早く『いなくなってくださいよ』」 突き放す物言いも。 ロクな抵抗もしないのも。 すべて、シルヴィアを助けるためのもの。 だから、 「ほら、シルヴィアは『なにを聞いたとしても、振り返らず下に行ってください』。いいですね?」 これもシルヴィアのための言葉。 「ばか。ばかばかばかッッッ!!! 絶対、絶対恨んでやるんだからぁ」 「わたしはシルヴィアさえ生きていてくれたなら、恨んだりしませんよ。逆に言えば死んだら恨んじゃいますけどね」 震える声で。 『第一五二調査部隊』全員でかかっても傷一つ負わせられない怪物に囚われた状態で。 それでもアイリは最後にこう言った。 「わたしの決意を無駄にしないために行ってください、シルヴィア」
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加