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「…………ふざけんじゃねーですよ」
こんなことを言っている場合ではないことはわかっていた。
それでも動き出した口を止めることはできなかった。
なぜアイリが急に『諦めた』のか。
その理由は考えればすぐにわかることだった。
「こ、の、ばか……アイリ……ッ! 私を助けるために―――ッッ!!」
「じゃあねって言いましたよね? 早く『いなくなってくださいよ』」
突き放す物言いも。
ロクな抵抗もしないのも。
すべて、シルヴィアを助けるためのもの。
だから、
「ほら、シルヴィアは『なにを聞いたとしても、振り返らず下に行ってください』。いいですね?」
これもシルヴィアのための言葉。
「ばか。ばかばかばかッッッ!!! 絶対、絶対恨んでやるんだからぁ」
「わたしはシルヴィアさえ生きていてくれたなら、恨んだりしませんよ。逆に言えば死んだら恨んじゃいますけどね」
震える声で。
『第一五二調査部隊』全員でかかっても傷一つ負わせられない怪物に囚われた状態で。
それでもアイリは最後にこう言った。
「わたしの決意を無駄にしないために行ってください、シルヴィア」
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