序章

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 ――やりすぎたかな?  そう思ったが、これは手加減なんか出来ない戦いだ。私に非はない。やらなければ、やられるのだ。  負ければ、『愛』を奪われるのだから。 「『愛』って、なんだろう……?」  私はそう呟いて、細長い蛍光灯の並ぶ無機質な天井を見上げた。  部屋には不規則かつ微少に響く電子音。ディスクにアクセスするドライブ音と、色とりどりの小さなランプが、小刻みにオンオフを繰り返す音がする。  良く耳を澄まさないと聞こえないような音も、ここではやけに耳につく。 「勝つしか、ないんだ……」  私の吐いた白い息がもわ、と広がり、人の温度が感じられない空間へと、すぐに消えていった。
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