第一話「ギルドへ」

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「どうしても行くのですか、兄上。」 城から街へ通じる隠し通路を歩いていると、後ろから弟の声が聞こえた。 「行く。」 と短く答えてから、また歩を進めようとしたとき、後ろから肩を掴まれた。 「理由を、教えてください。」 「…王を継ぐべきなのは、お前だ。」 「だから、私に王位を譲るために自分が去る…と。」 「そうだ。」 「何故、私が王位を継ぐべきだと判断したのですか?」 「学問はお前の方が上だ。頭の回転も早いし、 いざというときのひらめきは俺にはない。 俺の方が優れているのは武術くらいだ。表面的には平和な世の中、 王になるために必要な物じゃない。」 「そんなのは、私が兄上を助ければいい。」 「…お前は優しい奴だ。そう言うだろうと思った。」 「だったら…!」 「…父上も薄々気づいていると思うが、最近、叔父上とその仲が良い貴族がおかしい。」 「何が言いたいのですか?」 「叔父上が、何か企んでいるかもしれないということだ。」 「…………」 「まだ城では大きな変化があるわけではないが、街に出ればなにか情報を掴めるかもしれん。」 「乳母のリザ、世話役のマルタ、バルフレア師匠、父上、母上はそのことを…」 「手紙を残してある。今は知らないだろうが、朝には気づくはずだ。」 「分かりました。城のことは私に任せてください。」 「あぁ。連絡を密に取り合おう。週1で隠密のミストを寄越せ。」 「はい。」 「それと、マルタだが…いつか迎えに行くと手紙に書いてある。近々侵入者が来るぞ。」 「外で何をする気ですか、あなたは…。」 「まずはギルドに入ろうと思うが… 場合によっては義賊になるかもしれん」 「気を付けてくださいね。」 「あぁ」 弟とそんな会話をしてから、俺は城を出た。まだ春になったばかりで、夜風が冷たい。
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