第2幕~グラン・アダージオ~

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 非常線を潜り抜け、戸川警部補、有井刑事を始めとする捜査班一行は、1階のエントランスホールへと入った。 「しょえー! 何じゃこりゃ」  素っ頓狂な声を発した戸川の立っているエリアは、かつてNASAが実際の月面着陸で使用した『ルナ・マーズローバー』のレプリカが展示してあった。  その真横には、ジェミニ飛行船のこれまたレプリカ。 「これって、あれでしょ? 有井」 「はい。月面車ですね」 「マジでー? 運転してえ」    全員の血相が変わる。 「と、ともかく、この一角では、根尾羽咋市の名物とも言うべき、宇宙開発や宇宙、UFOにまつわる展示スペースとしての役割を果たしています」 「は? 何それ?」 「警部補、ご存じありませんか? ここ、石川県根尾羽咋市は、UFOの目撃件数が全国1位なんですよ」 「あたし、最近まで福井県警にいたから、知んない」  戸川警部補は【立ち入り禁止】と書かれた柵を乗り越えると、ジェミニ宇宙船のハッチに近付いた。 「おお、プラチナリングみたいな色してるわ」 「警部補、おやめ下さい」   
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