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「ところでさー、有井。誰がそんなこと決めたのー?」
「そんなこととは、どんなことですか?」
戸川は、ジェミニ宇宙船の内部カプセル型操縦席に、上半身を突っ込んだまま答える。
「根尾羽咋市が、UFOの目撃件数全国第1位とかいう話よー。誰が決めたのー?
誰が宇宙人とか、空飛ぶ円盤とか見たのよー?
いつ、何時何分? 地球が何回回った時よー?」
有井は、少々ムッとした表情のまま、珍しく反論した。
「警部補! お言葉ですが、ここ根尾羽咋市は、古来より宇宙人の目撃情報が多数あり、それらは数々の古文書などにも記されているのです。
例えば、成山飛行自在やちゅうはちぼんといった記述は未確認飛行物体、すなわちUFOを。
また、徳川家康が謁見したと伝えられる『肉人』と呼ばれるフワフワした皮膚と外見を持つ謎の人物は、宇宙人だという見解もあるのです!」
力説する有井刑事を尻目に、警部補は体をすっぽりとジェミニカプセルに入れてしまっていた。
「……警部補! 宇宙人はいるのであります!!
私達地球人が存在していて、他の惑星には知的生命体がいないというのは、理に適っていません!
例えばですよ。ある人が
『エビ料理が食べたいな』
と思って、空のお皿を前にナイフとフォークを持って、
『まだかな? まだかな?』
と待ってたけど、いつまで経ってもエビ料理が現れなかったら、
『この世にエビは存在しない!!』
って断言する様なもんですよ!?」
熱弁する有井。戸川は、ジェミニ飛行船の操縦席から、何やら銀色に輝く棒状の物体を取り出し、有井にそっと手渡した。
「なんか取れた」
「ギャーーーーーーッ!!」
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