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絶叫したままパニくる有井刑事を放置した戸川は、1階エントランスホールの内部をくまなく観察した。
ルナ・マーズローバーとジェミニのカプセルが展示されているスペースの左側には、オープンカフェ。
『名物UFOタコライス』と書かれたプレートには、微妙な画力とタッチで、火星人ともタコとも取れない得体の知れぬ生物のイラストが描かれていた。
「キモっ」
戸川はそう呟くと、カフェの椅子に腰を下ろし、斜め右向かいにある大きな扉を凝視した。
「んー? あれは、何?」
無線で本部との連絡をしていた、制服警官を呼び止める。
「ねえ、あの扉の向こうはどうなってんの?」
「……あ、少々お待ち下さい。はい? ああ、あれですか。あちらは、根尾羽咋市立劇場のミュージアム・ホールとなっております。
ご覧になられますか?」
「いや、後でいいや。
……そんじゃ、コロシの現場にそろそろ案内してもらえる?」
「はっ! 了解しました」
警部補はゆっくりと椅子から立ち上がると、制服警官の後について『研修室・第3楽屋』と記されたプレートの貼られた部屋の前まで向かう。
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