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9月半ばの金曜日。
仕事を終えて、駅に向かう途中でショルダーバッグの中の携帯が鳴ってることに気が付いた。
取りあえず、立ち止まって、携帯を出してみると
『中村彩子』
と表示されてる。
「もしもし」
「もしもし、イトちゃん?今、大丈夫?」
「はい、仕事終わって帰宅途中なんで、大丈夫です。」
「明日、暇?暇だよね?」
どうやら、彩子さんの中で私が土曜日に忙しいっていう選択肢はないらしい。
「暇じゃないって言ったらどうするんですか?」
ちょっと意地悪な質問で返してみる。
「えーっ、忙しいの?」
「いや、忙しくないですけど、なんですか?」
「じゃあ、明日一日、付き合って!!」
「何があるんですか?」
「会ってからのお楽しみ♪11時に名古屋の金時計ね!!」
ツーツーツー。
要件だけ言って切っちゃったよ。
彩子さんらしと言えば彩子さんらしいか。
大学の3歳年上の先輩で、なぜか気に入られてしまってずっと付き合いがある。
大抵、こんな風に突然、会うことになる。
いつものことと言えばいつものこと。
明日は、11時に名古屋に来てって言われたから、休みの日だけど、ちゃんと起きよう。
そう思って、帰宅した。
「お母さん、明日、名古屋に出かけるね。」
「何?デート?」
ニコニコしながら聞いてくる。
「先輩に呼び出された。」
「ふ~ん、わかった。」
デートでないとわかるとそっけない返事。
確かに、年頃の娘に彼氏もいないとなるとそんなものかな。
25歳だもんね。
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