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「イトちゃん、顔が百面相してるよ。」 意地悪な顔をした遠藤さんに指摘される。 恥かしい。 「考えてたんです。農協ってどんな仕事してるのかなって。」 「まぁ、色々あるんだけど、僕が所属してるのはさ、農協の不動産部門だったりするから。普通の不動産屋さんみたいな仕事を農協がやってる感じだよ。」 「へぇ。農協に不動産部門があるって初めて聞きました。銀行なら聞いたことあるけど。」 「そうだよね、銀行は聞いたことあるよね。」 6歳年上の遠藤さんとの会話はとってもスムーズ。 知らないことを教えてくれる先生みたいだ。 ふふふ。 「何、笑ってるの。楽しそうだね。」 「楽しいですよ。なんか、遠藤さんって、先生とかお兄ちゃんって感じがして話しやすいです。」 「お兄ちゃん?」 「ええ。私、兄がいるんです。だから、遠藤さんって、話しやすいからお兄ちゃんみたいかもって思ったんです。」 「お兄ちゃんかぁ。まぁ、いいか。」 「話てたら、あっと言う間ですね。もうすぐ着きますね。」 外の風景がいつもの高架駅に入って行く。 「本当だ。イトちゃん、乗り換えだよね。」 「はい。」 扉が開くのを待って二人でホームに出る。 「連絡先の交換しとこうよ。当分先だけど、幹事まかされたわけだしね。」 「あっ、そうですね。」 言われて、バッグから携帯を取り出す。
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