恋の落ち方

１

ふと、５年前の出来事を思い出す。
雨の日だったな、フラれたの。

「付き合って」
と言われて、舞い上がって付き合った。
初めてのデート、初めて手を繋いだ日。
初めてキスした日。
何もかもが初めてで、ドキドキして、楽しかった。

私にとってはすべてが初めてだったけど、彼にとっては初めてじゃなかったから。
だから、ゆっくりと進んでいけたらと思っていた私と、もっともっとと進みたかった彼との間に温度差ができてしまったのかもしれない。

「これ以上はもう少し、心の準備ができるまで待って欲しい」
そう伝えたときは
「分かった」
と言ってくれたけど、それから１週間後の雨の日にフラれた。

それがきっかけか、男の人と距離を置くようになってしまった。
友達としての付き合いはできるけど、それ以上にならないようにしていたのかもしれない。

卒業して、大きな会社に就職した。
そしたら、仕事が忙しすぎて、恋愛どころではなくなって体調まで悪化した。
２年で会社も辞めてしまった。

お給料に惹かれて入った会社だった。
それがいけなかったのかもしれない。
家から近い仕事場を探して見つけたのが今の文房具店。

そんなにお給料は良くないけれど、家から近くて自宅から２０分で会社に行ける。
さびれた田舎の地方都市の商店街の中にあって、割と大きなお店。
学校や近くの会社に事務用品を卸してる。
もちろん、店頭の販売もしている。