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鏡の前に強引に座らされてしまった。
「さて、今日はちょっとイトちゃんを可愛くしてあげる。」
にっこり笑いながら自分のバッグからゴソゴソと化粧ポーチを取り出した。
「アイシャドウと、アイライナーとビューラーとマスカラとチーク。こんなもんでいいか。」
そう言いながら、早速瞼に色をのせられる。
自分じゃ面倒で滅多にやらないから、サラサラとグラデーションを作り出す彩子さんが魔法使いみたいに見える。
「アイラインひくから、目、閉じて。」
言われるがままに目を閉じると、頬に手が当てられて、瞼の際にモゾモゾとラインがひかれる。
「こそばゆいんですけど!!」
「ちょっとじゃない。我慢してよ。はい、次、反対側。」
反対側もモゾモゾされる。
「はい、目、開けて」
目を開けると、いつもよりも目が大きく見える。
「ビューラーやってみて!!」
にっこり笑われて渡される。
自分じゃうまくできないんだけど、仕方がないから取りあえずやってみる。
「イトちゃん、あんまりまつ毛が上がってないよ。」
半ばあきれ顔の彩子さん。
「私もそう思います。まつ毛はいいんじゃないですか?」
溜息を一つついて、まつ毛は諦めて、チークを取り出した。
彩子さんによって、頬に色がさす。
「う~ん、80点!!」
満足そうな彩子さんを見ると、なぜか私も嬉しくなる。
「すみません、私がちゃんとお化粧してこなかったから、一緒に歩きたくなかったんですよね?」
ちょっと申し訳なく思ってそういったらキョトンとした顔をして
「違う違う、そうじゃなくって、私がそうしたかったからなの。まぁ、いいや。ご飯行こう!!」
すべてをキレイに片付けて、バッグにしまうと
「行こう!!」
と笑った。
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