380人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
「あー悪い」
つーかやばいな、まずいな。
言っちまったよ。
絶対なんか言われる。
「坂田、お前さっき……」
「っあーなんか腹痛いかも、ちょっとトイレ行ってくる」
訝しげにじっと見つめられるのに耐えられず、思わず席を立つ。
トイレに入ったはいいが、どうしたらいいものか。
便座に座って手を額に当てる姿はさながら考える人だな、と苦笑する。
あーーどうしようか。いっそ言ってしまうか。いやでもあいつ絶対俺の事親友だと思ってるだろ。
え、何これ嬉しいの、悲しいの。分かんね。
つかそろそろ出ていかないと俺怪しくね?マジで腹壊したと思われてんじゃね?じゃあどうすんの、冗談にする?それでいいのか、俺
「坂田ぁー。大丈夫か?」
「うぉっ!??ぉ、だいじょぶだいじょぶ」
「あんま長いから寝てんじゃねーかと思って」
「あーすぐ行くから、部屋で待ってろよ。トイレまで来るとかお前どんだけ俺のこと好きなんだよ」
ドア越しに聞こえるのほほんとした声に、これほど驚かされることはかつて無かっただろう。
思わず立ち上がった拍子に、予備に積んであったトイレットペーパーの山が崩れ落ちる。
頭が真っ白で、自分が何を言おうと思ってたとか、今何を言ってるとか、全っ然分からない。
荒木は、今、どんな顔をしてるんだろう。
「…なんかいつもと違うお前が心配で、こうしてトイレの前まで来るくらいには好きだけど」
「っ!」
何それ、反則。
拗ねた様な声が聞こえる。俺の事、本当に心配してくれてるのが伝わる。
残酷な程に、胸が痛い。
「…マジで。熱烈な愛の告白さんきゅ。…」
…俺も。って呟けるのは心の中だけ。
「………よしっ!待たせたな!エロい声で柔軟する荒木くん!」
「……。水流せよ」
「仕様だろ」
一息ついて、勢い良くドアを開ける。
なんだか良く分からないけど、そういう意味で荒木を困らせたくない。
「つかエロくねーし」
「反応遅い」
「……坂田」
「ん?」
「何かあったら、言えよ。…親友だろ」
「…まぁな!荒木は親友の俺が大好きだもんな!
…ありがと」
今は、これでいいかな。
あくまでも今は、だけどな。
-end
最初のコメントを投稿しよう!