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どうして、こんなことに。
世間では爽やか王子と評判の青葉のおかげで、食堂での一件は瞬く間に学校中に知れ渡った。
それから制裁と言う名の暴力は格段に減ったけど、突然の環境の変化についていけない自分がいる。
青葉は転校生と行動するのはやめたようで、友達といるところを親衛隊やそれに類似した外見の人達に囲まれている。
何でそんなことが分かるかって、自分が呼び出しておいていざ来たらこの有り様だからね。嫌でも見なきゃいけないという。
何話してるのか知らないけど、あの中に入っていくの、嫌だなぁ。
溜息をつくと、ようやく青葉も気付いたみたいで手招きしてくれた。
近づこうかと足を踏み出したタイミングで、ざっとみんなの視線が僕に向く。
「……っ」
やめてください、こっち見ないでいいからみんな自分のしてること続けてくださいほんと。
この感じがすごい苦手なのに、青葉のおかげでしょっちゅう注目されては小さくならなきゃいけない。
って言うか用事があるなら自分が来たらよくないか。
とブツブツ文句を言っているうちに青葉の席に到着。周りを取り囲んでた人達も居なくなって、廊下から一番遠い席に綺麗に座って僕を待ってた。
「……なに」
「なにって、用事がないと会っちゃ駄目?真言の顔が見たくなっただけなんだけど」
「…ほんとのところは?」
「嘘じゃないっつーの。ほんとのところは6限目で使う教科書忘れたから貸して」
「……。それ僕が来る前に言ってよ」
にこにこしながら言ってる割には威圧感を感じるのは多分僕だけだろう。
僕の制服のポケットに手を突っ込んで、ハンカチだの目薬だのを飽きもせず弄り回してる青葉をじっと見下ろす。
「それじゃ真言が一回しか来なくて良くなるじゃないか」
「……」
……そういうことさらっと言わないで欲しい。
「あ、顔赤くなった」
「……見ないで」
「独占されてるみたいで嬉しい?」
「…も、やめてってば」
下から上目で意地悪そうに覗き込まれると、真っ赤な顔を隠したくてついそっぽを向いてしまう。
「…6限の前に、持ってくるから」
「ありがとう。あとその顔のまま帰るのやめてね」
「…?どうしたらいいの」
「ほら、授業前2分だよ」
「えっ…早く言ってよ!戻らないと」
「じゃあねー」
いっつも青葉に振り回されるんだから。
最後には顔を青くして走って帰る僕だった。
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