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あの後授業開始には間に合ったものの、猛ダッシュで教室に駆け込んだお陰でまたもやクラス中の注目を集める羽目になった。
(大体、なんで僕がこうも青葉に振り回されないといけないのか…)
青葉が使うという教科書を用意しながら小さくため息をつく。 いまいち晴れない気持ちを抱えていると、ふと足元に影が差した。
顔を上げると、男受けを狙っているような、可愛らしい見た目の、恐らく誰かの親衛隊なのだろう小さめの男が数人立っていた。
「……?」
「あの、その…ふ、藤原くん。何か悩み事でもあるの?」
その中でも真ん中に立つ、一際華やかな雰囲気を持つ男が遠慮がちに声をかけてきた。
…この人たち、制裁してきた人かな?顔覚えてないや。
「…まぁ、ちょっと」
「僕たちでよかったら、話聞くからね!もし何かあったら、言ってくれていいんだよ!」
「…ありがとうございます」
優しい言葉は嬉しいけど、他人と関わるのって良く分からない、と思う。
笑顔もぎこちないものを浮かべながら、やんわりとお断りしておく。
「…ごめん、ちょっと席を外さないといけなくて」
青葉になにか言われたらたまったもんじゃないからね。
相手の返事もそこそこに席を立ち教室を出た。
「……遅かったね?何かあったの?」
「…いや、別に…」
「何があったの?」
「…クラスの人に声かけられてただけ」
「真言が?…ふーん」
青葉は笑顔を浮かべてはいるが、僕の内心はヒヤヒヤだった。
おまけに今日に限って青葉の友達がハイテンションで僕に絡んでくるから避けるのが大変だったし、お腹の辺りを触られたときは身震いしてしまった。
「真言」
帰り際に青葉が僕の腕を引く。
「帰ったら、俺の部屋に来ること」
…僕って、不幸の子なのかな。
空は清々しい程に青い。
周りで談笑してる声も、何故かテンションの高い青葉の友達も、全部欝に感じて肩を落として青葉の教室を出たのだった。
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