東雲 棗は入部する

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一体、この先生のどこに高2の平均的な体型の俺を"片手"で放り投げる力があるのだろうか。 そのモデル並みの体型といい馬鹿力といい、もう人体の神秘とかいう特番に出演できるレベルだろ。 変に捻った首をさすっていると、向かいの椅子に先生が足を組んで座った。 「東雲、私が言いたいことはわかるな…?」 「いや、俺エスパーじゃないんでわから---」 ドンッ! 「ないわけないじゃないですか!!イヤだな~もう先生ったら」 先生が殴ったロッカーの扉がくの字に折れて外れる。もう人体の神秘なんてレベルじゃない、鉄拳の新キャラにもなれちゃうレベルだ。 冷や汗がだらだらと出始めてそわそわしていると、先生は先ほどの紙をチラつかせて見せる。それは昨日書いた職業見学希望表だった。 「この紙は何だ?」 「何だって…、職業見学希望表?」 「違う。この紙に書いてある内容は何だと聞いたんだ」 何だと言われても、そこに書いてある通りとしか言えない。先生も俺の表情からその事に気付いたのか、大きな溜め息をついた。 「自宅警備って…、というかそんな職業あるわけがないだろう」 「え、知らないんですか?最近若い男性に人気の職業なんですよ。飯さえ貰えれば自宅を一日中警備をする新しいホームセキュリティ的なやつ」 「それを世間では引きこもりやニート、ヒモと呼ぶんだ!全く…、お前は入学した時から何も変わらないな」 ちなみに桐島先生は去年も俺の担任だった。その時から面談室にはよく通っていたため、先生の説教には慣れたものだ。 今では俺らに変な関係があるのではと疑われ始めているレベルである。
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