1人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
あれからどれだけ時間が過ぎたのだろうか。気がつくと、俺は古びた木の扉の前にいた。
ここに来るまでの記憶が無いことを考えると、どうやら発作のせいで気を失ってしまったようだ。
「あの、先生…。俺はどのくらい気を失ってました?」
「何を言うか、あれから3分しか経っていないぞ」
存外、軽症だった。
俺はフラフラと立ち上がると、改めて目の前の古びた木の扉のを見た。
表面に染みのようなものがあることから、随分古い扉だとわかる。
しかし俺は、その扉に貼ってある紙を見て止まった。
そこには、綺麗だが女子っぽい可愛らしい文字で
「身近なお手伝いから告白の手助けまで、 いかなる依頼もこなします。まずはご相談ください」
と書いてあった。
そう、可愛らしい女子っぽい文字で。
「あの、先生…」
「今度は何だ?早く入りたまえ、予定よりも2分遅れてるんだ」
桐島先生はイライラした様子で腕を組む。
俺は発作の初症状である冷や汗をかきながら、一つの先生に質問を切り出した。
「本当に大事な質問、返答によっては命に関わる質問なんですが、もしかして部長って女っすか…?」
「ああ、女子だ」
終わった。
そう思った途端に血の臭いが蘇り、吐き気が込み上げてくる。
しかし先生は気にすることもなく、あろうことかいきなりドアを開け放った。
「私だ、入るぞ」
「先生、ノックくらいはして…。入ってからじゃ意味がない」
入室というか突入した先生へ向け、どこからか声がかかる。
続いて入室した俺は、声の主を探すべく部屋を見回して見ると、いた。
部屋の奥、ソファーのところに1人の女子生徒が座っていた。
アッシュグレーの長い髪に陶器のように白い肌、逆光のため分かりづらいが顔立ちも良く、スラリと長い手足からはスタイルの良さもうかがえる。
夕日に照らされながらコーヒーを飲むその姿は、さながら一枚の絵画のようだった。
俺は、その神秘的な光景に思わず見とれてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!