東雲 棗は入部する

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あれからどれだけ時間が過ぎたのだろうか。気がつくと、俺は古びた木の扉の前にいた。 ここに来るまでの記憶が無いことを考えると、どうやら発作のせいで気を失ってしまったようだ。 「あの、先生…。俺はどのくらい気を失ってました?」 「何を言うか、あれから3分しか経っていないぞ」 存外、軽症だった。 俺はフラフラと立ち上がると、改めて目の前の古びた木の扉のを見た。 表面に染みのようなものがあることから、随分古い扉だとわかる。 しかし俺は、その扉に貼ってある紙を見て止まった。 そこには、綺麗だが女子っぽい可愛らしい文字で 「身近なお手伝いから告白の手助けまで、 いかなる依頼もこなします。まずはご相談ください」 と書いてあった。 そう、可愛らしい女子っぽい文字で。 「あの、先生…」 「今度は何だ?早く入りたまえ、予定よりも2分遅れてるんだ」 桐島先生はイライラした様子で腕を組む。 俺は発作の初症状である冷や汗をかきながら、一つの先生に質問を切り出した。 「本当に大事な質問、返答によっては命に関わる質問なんですが、もしかして部長って女っすか…?」 「ああ、女子だ」 終わった。 そう思った途端に血の臭いが蘇り、吐き気が込み上げてくる。 しかし先生は気にすることもなく、あろうことかいきなりドアを開け放った。 「私だ、入るぞ」 「先生、ノックくらいはして…。入ってからじゃ意味がない」 入室というか突入した先生へ向け、どこからか声がかかる。 続いて入室した俺は、声の主を探すべく部屋を見回して見ると、いた。 部屋の奥、ソファーのところに1人の女子生徒が座っていた。 アッシュグレーの長い髪に陶器のように白い肌、逆光のため分かりづらいが顔立ちも良く、スラリと長い手足からはスタイルの良さもうかがえる。 夕日に照らされながらコーヒーを飲むその姿は、さながら一枚の絵画のようだった。 俺は、その神秘的な光景に思わず見とれてしまった。
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