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「つまらない。別の言い方にすると・・・おもしろくない。」
「同じだよ。」
「通信簿もいっつもオール3だったし、つまんない。始は1がいっぱいあったけど、5もいっぱいあったんだよねー。」
「悪かったね…俺、今日晩飯いらないから。」
「あら珍しいわね!どうした?女でもできた?ブス?」
「母親がそういう言い方すんなって。クラス会があんの。だから、バイト終わったらそのまま栃木行って来るからね。」
「へぇ~!」
「お、行くのか?栃木に。」
ようやく父は会話に参加入ってきた。
「うん、行くよ。」
「じゃあ、あれ買ってきてくれないかな。木綿屋の羊羹・・・」
「やだ。だって、持って歩くのやだしさ。」
「うん。。」
「でも珍しいわね、クラス会なんて。始めは何回もあったみたいだけど。」
「俺、卒業までいなかったからさ卒業名簿に載ってないと思うんだよねー。忘れられてたのかな?」
「陰も薄いしねー。」
終は無言で母を見た。
「ごめん!でもいいよね、何でも言い合える親子って!」
「自分だけでしょ、何でも言ってるのは。」
「またまた~、綺麗で自慢なお母さんなくせにー。」
終はため息をついた。
「ごちそうさま。」
「やっぱり、あれダメかな?」
「やだ、持ってあるくのやだから。」
「はい。」
「うん。」
父は余程、そこの羊羹が食べたかったらしい。
「ただいま~う、うぅ。。」
兄の始が帰ってくるなり胸をおさえこみ倒れた。
「どうした!始~」
近寄って来たのは母だけだった。でも終と父はいつものことかというようにただ椅子から見てるだけだった。
「うぅー飲み過ぎた。。でも腹減った。。でも眠い。。でも金もない。。よろしく」
「よーし!任せて。」
「おかえり、久しぶり。」
「ただいま、工場長。」
すぐにケロッと起き上がり父に向かい敬礼のポーズをした。
「よせよ、今はもう違うよ。」
「行ってきます。」
兄の始にまったく触れず、家を出る準備にかかった。
「おい、終わり。」
始はやはり終に絡んできた。
「終わりって言うなよ。」
「今日ね、クラス会で栃木なんだって。」
「嘘!?じゃあ、あれ買ってきて、木綿屋の羊羹・・・」
「行ってきます。」
無視してリビングを出た。親子揃って好きなようだ。
「ちょっと、待ってお父さんも行くから。」
「行ってらっしゃい、元工場長。」
「うん。」
父もリビングを出て行った。
一足先に出た終が歩きながら、後ろを振り向くと父が小走りで手を振っていた。
[ま、こんな家族です。]
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