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「これ、ダサいよね。」
中林は名札を見てそう言った。助手席に座っていた中林の態度、口調はさっきとはあきらかに違っていた。
「え?あ、、はぁ。。」
「似合う?」
「はぁ。。」
「あの主任さ、頭悪そうな顔してるよね。」
「は?」
「君、バイトでしょ?大学生?」
中林はタバコを吸い始めた。
「まぁ、4年ですけど。」
「どこ?」
「いや、言っても多分分かんないと思うし。。」
「どこ?大抵知ってるよ。俺、東京だから。」
「あぁ、大成学院大学なんですけど.。」
「知らないなー。」
「ハハッ。。」
「俺さー、一ツ橋出てんだよね。」
「え?」
「なんで?なんでそんなエリートがって思ったでしょ。思ったよね?」
「はい。」
「ま、そういう時代なんだよね~。」
中林は身につけている金の腕時計を息でハーとして服で磨いた。中林の行動に終は首をかしげた。
スタジオの中はカメラのシャッター音が響いていた。
「右の彼女、もうちょっと笑顔くれる?」
「あ、はい。」
モデルの大場琴美は愛想笑いで返事をした。
それから何枚か写真を撮るが琴美だけはまったく笑ってなかった。
「笑って!」
そう注文されたが、まったく表情に変化はなかった。
「はぁ~、もうさ何回言わせるの?もっと笑ってくれないかな?これじゃ、撮れないよ。」
「はい、すみません。」
そして、笑おうとするが無理に笑みを作っている引きつった笑顔しかできなかった。
「もういいや。1ショットで行こう。」
「え?」
「悪いけど、あなた彼女の服着てくれる?」
「はい!分かりました!」
「衣装替えだ。」
ついに琴美は外され、もう1人のモデルの子の1ショットになってしまった。
「あのさ、通販のカタログの仕事が気に入らないわけ?」
1ショット撮影が始まる中、琴美はマネージャーに言われていた。
「いえ、そんなこと。。とんでもないです、有難いです。」
「じゃあ、何?」
「何って、、いえ。」
「笑顔にさ、華がないんだよねあなたは。」
「華?」
「そう、綺麗なのはいいんだけどさモデルとしては致命的なんだよね。なんかさー暗いんだよね!今のままじゃどうにもなんないよ。そもそもそんなにやる気があるように見えないんだけど。」
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