魔術師達と入学試験

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「《魔術》そう明証された摩訶不思議な現象が発見されたのは、その翌月の事だった。発見者は矢成修一(やなりしゅういち)。彼は当時、日本が浮上した理由を探る為、クレーター付近の地底を潜っていた」 ユリアナは日本地図の端に描かれた柱状図を指差す。 「浮上した日本の地底は約千メートル程度の深さを有しており、彼が潜っていたのは、その約半分。そこで彼は奇妙な楔形文字を発見したと言います。彼が後に出版した《地底漂流記》には、こう書かれています。よく聞いておいてね」 言うと、表示枠に文章を映した。 「その楔形文字に触れた途端、私は奇妙な体験をした。脳に膨大な量の楔形文字で書かれた式が流れてきたのだ。そして、私の手の平の上にその式の塊が光となって出現したのだ。楔形文字で構成された式の塊は小説や漫画で描かれる魔法陣のような姿をしていた。出現した魔法陣は青白く輝き続け、その魔法陣に力を加えた所、不思議な事が起きたのだ。私の体が宙に浮き始めたのだ。この現象を私は《魔術》だとここに記す」 ……何で私がこんなにも長い文章を声に出して読まないといけないのかしら? 思ったユリアナは納得のいかない表情で言葉を続ける。 「この奇妙な(魔術)は富士山に落ちた隕石の力だと言えよう。あの隕石は何かコズミックパワー的な物を持っていたのかもしれない。又は、宇宙人が何かしらの力を地球人に与える為に隕石型の添付メールとして送ったのかもしれない。私には分からなかった。しかし、これだけは分かる。私達はこの力を使って、科学技術に代わる魔術技術として新たな世界を築いて良いのだと」 長い文章を言って疲れたのか、ユリアナは少し休みを入れると、「続いて」と前置きを入れ、 「矢成修一が発見した魔術技術という新たな世界の礎により、空中浮遊都市・日本は世界で唯一無二の絶対的力を有する事となった」
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